ワレモノ

ワレモノ

水飛沫、水面、ワレモノは同一世界観のお話になっています

『ワレモノ』作 鐘崎那由他
僕は決めたんだ
僕は君だけを見ていたのに
君は彼だけを見ていたね
こんなにも僕は君だけを見ていたのに
彼は彼の夢を追いかけていた
彼の夢は君の夢ではなかったのに
君にとっては太陽のように眩しかったんだね
君は彼の何を知っていたんだ
僕は君のことをこんなにも見ているのに
彼は霧のように消えてしまった
そして君もそのまま行ってしまった
君は鉄のかたまりに飛び込んでいってしまった
あんなに綺麗だった君の手が
どうしようもなくなってしまって
この僕の世界は真っ暗になってしまった
君は僕のすべてだった
僕はこんなにも君だけを見ていたというのに
君は気づかずに逝ってしまった
君はこの世界から解き放たれて自由になったんだね
僕も君の世界に行くよ
君がいないこの世界からもうすぐ飛び立てる
待っていてね

 

前日譚のお話はこちら『水飛沫』
二つ目のお話はこちらのお話はこちら『水面』
お話一覧に戻る