『夢の便り』作 鐘崎那由他

 

それはひらひらと舞っている桜のようで、
それはふわふわと舞っている雪のように、
触ると儚くも消えてしまう。
それはぽかぽかと暖かい朝の陽(ひ)のようで、
それはきらきらと輝(かがや)く陽(ひ)の光のように、
手を伸ばしても届かない。
それは深々と降り積もる雪のようで、
それは鬱蒼と生い茂る草木(くさき)のように、道を閉ざし覆い被さる。
夢の便りは儚くも暖かく厳しい。
だから人は叫ぶのだ。私はここに居ると。
そうしなければ、数多(あまた)の屍と共に埋もれてしまうのだから。

 

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