遠望(えんぼう)

遠望(えんぼう)

『遠望(えんぼう)』 作 鐘崎那由他
僕に君のことが好きだと言える勇気があったなら
君のとなりをアイツの代わりに歩けただろうか
君はずっと待っていてくれていたのに
僕にはその一言を伝える勇気がなかった
小学校から三人一緒で何をするにも一緒で
いつの間にか僕だけ周回遅れだったんだね
アイツなら君のことを幸せにしてくれる
わかってるからこそ悔しい
僕がそこに居たかった
君のとなりはひとつしか無かったのに
一歩がなかなか踏み出せなかった
「今でも好きだよ」遅くなってごめんね
僕は遠い空の向こうに小さく呟いた
ふと、星が一つ応えた気がして涙が零れた
なんだ、これでよかったんだ
こんな簡単なことだったんだ
明くる朝はいつもより澄んでるような気がした
昨日までの僕は曇り空、明日は虹が掛かるかな

 

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